先日、知人YからSOSの連絡を受けました。実家から浴衣セットが送られてきたので、どうすれば良いか教えてほしいとのこと。急遽、着付けレッスンをすることに。箱の中には浴衣、つけ帯、下着類、巾着などの小物まで…至れり尽くせりのセット。その中に謎の布がヒラリ。何だろ? 腰紐にしては短い。Yがあらかじめラベルを取っておいたので、分らない。Y曰く、エリだという。エリ…衿?
実は、色柄違いでもうワンセットあったので、それを開封してみることに。手つかずのセットの中にはやはり「エリ」が入っていた。しかも未開封のパッケージには「ユカタヨウカサネエリ」としっかり明記。う”〜。販売メーカーがこういうことをするか!? マイッタ。
近頃は浴衣を華美に飾り上げるのが若い人中心のファッションに取り入れらえています。ファッションは文字通り、その時々のニーズや趣向に基づくものですから、いろんな関わり方や風潮あってしかり。それぞれが楽しく自由に装えばOK。けれど最低限のラインというのは知っておいて欲しいです。少々口はばったいようですが、あえて発言させてもらいます。
キモノ関連の雑誌や特集が増えているのはとても嬉しいですね。フォーマルなものからくだけたものまで種類も豊富。中にはビックリするほど独創的でポップなコーディネートも登場します。着物にアクセサリーをジャラジャラ、サングラスに毛皮のマントに編タイツ…。ひとつのアートとして眺めた場合、トキメキがいっぱいで私も決してキライではありません。ただ、それは雑誌の「ページ」というフレームがあって始めて成り立つもではないでしょうか。パリコレなどで発表される奇抜なスタイルも、ステージの上の演出された世界と実際のユーザーに合うものとでは違います。REAL CLOTHES という表現があるように、キモノにも実生活の中で活きてくるスタイルがあります。オシャレな皆さんには、どうかそのエッセンスだけを上手に取り入れて頂ければと思います。
かくいう私も(20年以上も昔)パンクにドップリでした。ガンガンに逆毛を立てて、スタッド付きの首輪をしながらキモノを着てました。上前もわざと逆にしたりして…。今にして思えば、そのころ大人たちはさぞ苦々しい想いで私を見ていたことでしょう。若かったな〜。しかし!(自分を正当化するわけではないですが)何かに対するアンチテーゼや自己表現としてタプ−を犯すのと、知らないで「やってしまう」のとでは違います。
歌舞伎役者の中村勘三郎氏がこんなことをおっしゃっていました。
「基本が出来てるうえで自由にやるのは型破り。だが基本もないくせに好き勝手やるのはただの形無しだ」
さすがですね。お芝居や着付けに限らず、これは何にでも当てはまる言葉だとして私に深く突き刺さっています。
何だか随分と話題が広がってしまいましたが、さて、ユカタヨウカサネエリについて。
これはまず有り得ません。そもそも重ね衿=伊達衿というのはフォーマルなものです。留袖、振り袖、訪問着などに用います。つまり浴衣に重ね衿なんて、まるでパジャマにネクタイをすうるようなもの。はっきり云ってトンチンカン。
しつこいようですが、浴衣はあくまでも「涼やか」「爽やか」「手軽」が身上。ちょっとしたお出かけで、襦袢に衿をつける場合でも白く、幅もあまり大きく出さずにスッキリさせるのがオシャレ。また帯揚げや帯締めはお太鼓結びにするために必要なものです。サラリと半幅帯を締めたなら必要ないもの。どうしても飾りが欲しい時は、根付けや小さめのさりげない帯留めぐらいが良いでしょう。
(あれもこれも「さも必要」というように商品が出回っていますが、メーカーさんの「商売っけ」に振り回されないようにご注意を!)
やっと梅雨が明け、「やっぱり浴衣を新調したい」という方もいるのでは? 今からだと仕立て屋さんが夏休みに入ってしまうので、だいたい仕上がりが8月20日頃になる可能性あり。でも超ラッキーならギリギリお盆直前に滑り込めるかもしれません。いずれにせよ、思い立ったら一分でも早く行動に移すべし! 浴衣の着用時期は7月、8月と云われていますが、この暑さ。秋祭りやご近所用の普段着としてまだまだ出番はありますよ。種類によっては単衣のキモノとして活用できるものもあります。浴衣出遅れ組の皆さんもまだ諦めないでくださいね。