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服部綴工房 3~職人の世界

鈴:ところで初歩的な質問ですが。実際、帯屋さん…つまり織屋さんは何をするんですか。糸は糸屋さんが用意してきて、織るだけなのか、デザインも担当するのか、どこまでが服部さんの仕事なんですか。

服:由緒正しい西陣の織屋のオヤジが何をするか。糸を買う手配をする。図柄は絵描きさんに描いてもらう。色は染屋さんに染めてもらう。織るのは職人さん、織り子さんに織ってもらう。それを問屋さんに持っていって売るというプロデューサー作業です。各セクションの人に発注することで、雇用が生まれ全体が産地として成り立つわけです。

鈴:うまい具合に地域がいいバランスで循環してるんですね。「循環」とか「環境」とか、そういった物事のサイクルを表す「環」という字…「わ」とも読みますよね。それは「和」の「わ」にも繋がると私は思っています。

服:そうですね。でも機屋のありようも随分変りましたよ。

鈴:たとえば?

服:一つ面白い話があります。綴れに限らず、昔はパッタンパッタンと帯を織るときは竹おさ(機織りで横糸を織り込むのに使う道具)を使ってました。竹おさと云うぐらいですから当然、竹で出来てます。とても風合いも良く織り上がるので各産地で使ってました。けれど今はほぼ全て金物に変ってるはずです。竹おさの竹の歯を作るおじいさんが辞めてしまったら日本全国から竹おさが消えたんです。日本全国、ただの一人が作ってたの。青森の裂織りのおばちゃんも、結城の産地の人も、大島の産地の人も、南の島の人も、ある日を越えて、全員が一斉に「竹おさがなくなった!」って叫んだんです。それまで、竹おさを作ってるのは日本全国でたった一人だったなんて誰も知らんかったんです。

Hata
渋谷の玉川屋さんにて。お店に持ち込まれた機をいじる石井社長。手を動かすうちに、つい夢中に!


鈴:もう竹おさで織ったものは無くなったままなんですか?

服:今一人竹細工のおっさんが出て来て、再び作ろうと練習してますが、今のところはまだありません。

鈴:まだ使えるようになるのにどのぐらい先になるか分らないんですね。当分かかるのか、それともやっぱりダメだったということになって、永遠に無くなってしまうか。

服:わかりませんね。特に綴れみたいに精密さを要求する織物なんかでは、相当にすぐれたものでないと使えないので。ですから今はやむなくステンレスの金おさに切り替わってますが、竹に比べて重たいから、風合いも違ってきます。

鈴:糸を寄せた時に重みでドスンとくれば、その分きつくなって、帯が硬くなったりして…。うーむ、残念。

服: 似た話で、漆を塗る筆には琵琶湖のネズミの毛がいいらしいんです。

鈴:他のネズミじゃダメなんですか?

服:ダメ。同じネズミが東京にもいるんですけど、東京のは狭いところをチョロチョロしてるうちに毛が切れちゃって使えない。自然の中にいるネズミのはのびのびしてるらしい。でも一番の問題は、今それを捕まえる人がいなんです。

鈴:犬みたいに適した種類を掛け合わせたりして筆ネズミを作れないんですか。

服:そこまでやるほど需要はないんです。漆の筆がもっともっと売れるんなら有り得るかもしれないけど。売れないから後継者がいない。江戸小紋の型を彫る道具の職人さんがいないとか、よく耳にするでしょ。それから絞りも、桶絞りってのがありますが、桶を作る人がいない。
 後継者がどうしたこうした。こういう話はたいてい陽のあたる部分での人材を心配するけど、もっと困るのはそれを支える道具を作る人とか、もっとベーシックな、陽の当たらないところ。この人たちは何十人、何十軒という織り屋がいて成り立つわけで、もし織屋が何十軒の半分になったら、道具を作る人は生活できないから辞めちゃう。

鈴:わぁ、伝統が守られ、受け継がれてゆくって本当に大変。全ての事柄は連鎖していて、きわどいバランスでどうにか成り立ってるんですね。ちゃんとそういうことを意識していかないと、そのうち着物だって完全に無くなっちゃうかも。イヤ〜。

服:いやいや、ホントに。でも今は若い方でも積極的に和服に興味を持ってくださる。とても有り難いことですわ。

鈴:はい、私ももっともっと着ます!長い時間、楽しいお話を本当にありがとうございました。とても勉強になりました。ぜひまた宜しくお願い致します。

Hattorisan
服部さん、本当にありがとうございました。またいろいろ教えてください!

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2006年10月02日 09:26に投稿されたエントリーのページです。

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