松枝哲哉さん~1
重要無形文化財久留米絣技術保持者である松枝哲哉さんは、同じく久留米絣における人間国宝・松枝玉記さんのお孫さんです。その松枝哲哉さんが上京していると聞いて、喜びいさんで会いに行ってきました。
実は、全くブランドに興味のない私は「@@@先生」と作家さんの名前を云われても、しばしばピンときません。ところが数年前に一枚の着物に恋をしまして、それが松枝哲哉さんの作品だったのです。以来、どんな方がこの着物を創ったのかしら、と想像を膨らませていたのです。まさにインタビューのチャンス。鈴なりインタビュー企画・第2弾でございます!
「おぉ、嬉しいな。私の作品ですね」という声に振り向くと、小柄で目のクリクリした人が立っていました。瞬時に頭に浮かんだのは、白黒ネコのFELIX。それが松枝哲哉さんとの出会いの瞬間でした。(マジドキだった〜)
万)まず久留米絣の特徴から教えてください。
松)先染めの平織りであるということ。藍を使っていること。綿であること。投げ杼(杼=緯糸を通すときに使うもの)で緯糸の打ち込みをすること。その他、細かく挙げれば、もっといろいろ規定はありますが、だいたいはそんなところでしょう。
万)先染めの平織りと一口に云いますが、その行程たるや大変なものなんですよね。
松)えぇ。絣は織るときにはすでに模様ができています。どういうことかと云うと、予め糸を括って染め分けてあります。つまり先染めですね。それを経糸と緯糸で織ってゆきます。初歩的なものは縦絣。縦にだけ模様がある。技法が簡単で、一番原始的。それから横絣があって、後は縦横の絣。3種類。

括り糸の見本。括ったところだけ染まらずに白く残ります。その計算された白色や藍の濃淡の部分がタテ・ヨコと織られて、絵が浮き出てきます。これが絵絣です。
万)こうやって松枝さんの作品を見ても、細かいところは本当に細かい!また、ダイナミックに思い切りいいところがあったり…素人目に見てもクラクラします。
松)縦横絣は技法的にも難しいので、世界的に見ても、分布してるところは限られてます。インド、インドネシアの小さな村、そして日本。日本には全ての絣(技法)があるんですよ。
万)珍しいことなんですか?
松)はい。「絣」というものが日本人の感性ににあっていたからなんでしょう。
万)そして間違いなく松枝さんの感性にもハマったわけですね!松枝さんは始めからこの道に進もうと思ってらしたのですか? 他に、子供のころに夢見た職業とかは?
松)ないですね。中学に入ったころには、もう藍染めを始めてましたし。
万)一途というか…。浮気しないタイプですか(笑)。お祖父さまの玉記さんの存在が大きかったのでしょうか。逆に偉い人が身近にいるだけに、プレッシャーもありましたか?
松)プレッシャーは全くありません。実は私の父はサラリーマンだったんです。なぜ久留米絣の家に生まれて、って思われるでしょ。単純に食えなかったんですね。それで父は一家のために努めに出てくれました。ですから私には祖父や父の想いもあるんです。だから余計に「やるぞ!」って。
万)「食えない」というのは時代ですか。
松)久留米絣の長い歴史の中で、最盛期には220万反も作られていたものが、昭和20年には戦争でほとんど無くなってしまいました。120反だけ…それも技術保存のためだけに作られるようになりあました。それから戦後、少しずつ持ち直して現在は10万反ぐらいかな。それでもまだまだ頑張らないと(笑)。
つづく…












