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Ms. ドライバーへ、

 8月20日。
 移動のほとんどは徒歩、或いは電車を利用しています。きっと速度がちょうど良いのかもしれません。移り変わってゆく景色を味わってから飲み込むことを許される速度。それ故でしょうか、たまに違うスピードに乗ると、なんだか世界が少し違った角度で見えてくるような気がします。

 先日、定年退職をしてから2種免許を取得して、日々クルマを走らせているという女性のタクシー運転手と出会いました。それだけでも感心してしまうのですが、何よりも彼女のまっすぐな眼差しが麗しかった。目の前に広がる何本ものルートの中から、最善だと思う道を選んだら、それを信じて進んでゆくような目。
 穏やかな老後を夢見て頑張ってきたのに、運命は彼女から家族を奪ってしまった。ほんのわずかな時間で、何を知ることもできないけれど、真っ白な手袋の中から、きちんと被った帽子の中から、少しくたびれた肩から…彼女のあちこちから、まるで蒸気のように立ちのぼる哀しみ。しかしその蒸気は悲観の涙に結晶するでもなく、或いはすでに乾ききってしまったのかもしれないけれど、新しいカタチの強さとなって漂っていました。少なくともどこにも負を見つけることができませんでした。
 世間話とも身の上話ともつかないような、つたない言葉のやりとりをしてるうちに目的地に到着。運転手としても実にプロフェッショナルで、私はなんと清々しい気持ちにさせてもらったことか。職業へのプライド。自分自身であることへのプライド。見事なハンドルさばきで渋滞を切り抜け、路地を出たときにはワープでもしたような驚き。同時に彼女のクルマに乗る前の私は、完全に新鮮な心持ちと共に新しい私になっていたと思います。ありがとう。

コメント (3)

。:

女の人にしかできない仕事もあるから、
男の人にしかできない仕事もあるから、
女の人も男の人もできる仕事あるから、
女男力を合わせてする仕事もあるから、

アッちゃん:

男性社会(今だに)に混じって働く、女性を目にする機会が増えましたね。
いろいろ苦労をしているはずですが、総じて皆一生懸命で、まじめに取組んでいるように感じます。ただ、女性はまだ、過分に一生懸命やらないと評価されないという仕組みが残っているように思います。(男は「オマエそれでもプロか!」と言いたくなるような仕事っぷりが多くなったのにね。)
Ms.ドライバーには、身の上の悲しみのほかに、そういったものを乗り越えた上での、気負いのない強さがあるのでしょうね。
ブナさんの先日の浴衣の仕立ての話しにもありましたが、プロ意識にあふれた誠実な仕事に出会うと、うれしいものですね。

ayuhey:

ボクも「あ」や「あゆ」じゃなく、ちゃんと名乗ります。
森野ブナさんにインスパイヤーされて。。。

ブナさんのタクシーの話。
いいですね。
感性が豊かですと見る対象が輝いて見えます。
ものに対する優しさが見えます。

今日は所要で靖国神社の近く、市ヶ谷に行ってきました。
外堀の色は抹茶のようでした。
東京もしばらく降雨が無いのでアオコが増えたようです。
あれが進むと魚類はおろか、マッカチンも生息できません。
被害が出ない程度の大雨が☆ぃです。

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2007年08月20日 11:29に投稿されたエントリーのページです。

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