9月3日
8月の終わりに京都を訪れました。晩夏の京都は思ったほど暑くなく(たまたまでしょうが…)風情があってすばらしかった。夜は鴨川の川床で夕飯を頂きながら、月が登ってゆくのを眺めていました。満月に向って膨らむお月様。欠けては満ちて、満ちては欠けて…。そんなお月様を見上げていると、いろんなことが許されてゆくようで。少しだけ救われたみたいな気がしました。
今回の旅は大好きな織元さん(洛風林)と染め元さん(多ち花)を訪ねるのが目的。どちらも丁寧でしっかりとした仕事に定評のあるところです。呉服は主に分業制なので、プロデューサー的な人が、こんなのどうか、といったアイディアを職人さんに持って行き、そこで煮詰めた案をもとに、さらに役割別の職人さんに仕事が振られます。そんな職人さんの仕事場に入れて頂きました。かなりディープな体験が出来たことに感謝します。
全てをレポートするのは大変なので省略しますが、一番驚いたことを挙げるとすれば「石」です。写真にもあるように、織機にかけた糸にちょうど良いテンションをかけなくてはなりません。なんとその調節を、近所で拾ってきた石でやってるのです。足元には大小様々の石がゴロゴロ。季節や天気によっても糸の具合は違ってきます。その微妙な違いを職人さんは身体で感じ取って、石を使ってテンションを調節します。

友人のミュージシャンはステージ上でも何度もギターのチューニングをします。お客さんの入り具合でも音は変わるとか。また、料理人の故・辻嘉一さんのレシピには○○グラムといった分量はなかったといいます。それは食材の味の違いによって調味料は加減するものだし、食べる人によっても加減が必要だからです。すべて「適宜」としか書かれていません。
織機の石にも同じスピリットを感じました。アナログなどという次元を越えた、もっと動物的な勘。生きることに貪欲で何が悪いとでも云うような真っ直ぐさ。原始的であることで、あらゆるテクノロジーを凌駕し、薄っぺらなギミックを笑い飛ばす。そんな本物の力強さにシビレました。