4月20日
私道をはさんだ向いには、気のいいオバさまが一人で暮らしています。家の出入りに顔を見れば二言三言交わしたり、たまにはお裾分けをしあったり、程よい距離感のお付き合いをしています。
昨日は不安定なお天気。夕方、雨の音に気づいて外を見やると、向いのベランダの物干竿にシーツがはためいていました。これは大変。急いで下駄をつっかけて、雨を知らせに走りました。
今朝のこと。呼び鈴に気づいて出てみると、お向かいさんでした。
「昨日はありがとう。本当に助かったわ。これ良かったら…」
差し出された箱を開けると中には大判ハンカチとポーチのセット。たかが雨を知らせたぐらいで申し訳ない。私が困っていると
「ずっと使わずに持ってたんだけど、私にはもう赤すぎるからね」と微笑んでいる。
遠慮で引っ込んだ手が、自然にのびる。「私にはもう赤すぎる」という一言は彼女の思いやりに他ならない。有り難く受けとりました。
時間にすれば、ほんの数分の出来事ですが、とても気持ちのよい時間でした。振り返れば当たり前のことばかり。挨拶をするとか、雨を知らせるとか、お礼をするとか、互いを気にかけるとか。しかし考えてみれば、人の道とは、当たり前の往来なのかも……そんな小さなことが人間を結んでゆくのでしょう。次にクッキーを焼くときは、彼女のために多めにこしらえなくちゃ!

可愛らしさの中にピリっと光る粋。さすが「いせ辰」のもんだね。