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9月5日 魅惑のブタ

 ずいぶん前に、夢日記をつけていたことがある。形にならないもの、感触や感覚だけのものをどう言葉で表現するか、というトレーニングの意味も込めて、何年間か続けた。肉体と同様、精神も感受性も、甘やかせばすぐに筋力は衰えてしまう。

 陳健一さんのとこで中華料理を頂くことになり、不慣れな私は全てを任せることにした。次々と出てくるお料理は、どれも美しくて美味しい。しかし、あの黒い物体が目の前に置かれたときは、かたまった。

 これか…
       うわさに聞いた…


               「魅惑の黒酢スブタ・スーツァンスタイル」

 熱さを警戒しながら口に運ぶと、しっかりとした黒酢の風味が喉の奧を刺激する。ドロリと濃厚なエネルギーが逃げ場を求めて口の中で暴れだす。慌てるな。うろたえれば、むせる。ヨガの呼吸のように、己の肉体を感じながら、ゆっくりと鼻腔を開放する。むほ〜♥。うめぇー。

 酸味と甘みのバランスがいいとか。お肉を荒く刻んでいるので、歯ごたえにも気骨があるとか。なんとかテキトーなことを並べてみたところで、上滑りの虚しさしかのこらない。この感激を到底伝えられるものではない。くー。表現の筋力が落ちているのを痛感。あるいは、この味に匹敵する筋力など、そもそも持ち合わせてなかったのか?語彙の貧しさが、また悔しい。

 それにしても、真底、美味しいものを口にしたとき「おいしい」しか出て来ないものなのかもしれない。
愛しい人の前で言葉をうしない、ただただ抱かれる喜びに身をよじり、「好き」と息を洩らすように。

         kurobuta.jpg

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2009年09月06日 12:22に投稿されたエントリーのページです。

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